誕生前の命を守る新しい医療をどう自治体が支援していくか・・・千葉市の場合
国内では普及していない胎児ドッグの可能性を確信した私たちは、県内の妊婦さんに必要な情報と支援が届くよう、行政との連携の必要性を感じました。
特に千葉市は、クリニック所在地でもあり、林院長が市立青葉病院に勤務されていたため、一番の理解を求めたいところです。
千葉市公立病院での実績 公立での評価を普及の力に
厚生労働省から令和3年6月には、胎児期からの切れ目のない小 児医療や福祉施策との連携の在り方等に関する議論が重ねられ地方自治体において、適切な情報提供や相談支援の体制を整備するよう通知されました。
千葉市では令和2年1月から市立青葉病院で、超音波検査パンフレットを全員に配布した上で試行的に実施、令和3年からは本格実施されており、市立海浜病院でも導入が決定しました。
海浜病院は、周産期・小児医療に一連で対応できる体制があり、今までも胎児の染色体異常や遺伝性疾患に関する検査、遺伝に関する心理面や社会的な支援を目的に遺伝カウンセリングを実施してきたため、体制の強化に繋がりました。
さらに、市立病院では、胎児の状況に応じて、院内の精神科リエゾン看護師や助産師による検査後のサポート体制も整備しています。
厚労省の調査によると、胎児の詳細な状態を知り、検査を受けたいという妊婦の方のニーズは確実なことから、今後は、検査における費用負担を軽減するための補助金を検討するなど、希望する誰もが検査を受診できる環境整備が必要と考えます。
公立病院でこのような先進的な検査の実績が、検査の必要性や信頼への啓発に繋がることを期待します。
国家戦略特区の規制緩和を見据えた意見交換 フロントランナーを目指す
千葉市は、国家戦略特区に指定されており、特に幕張新都心は、未来型の国際業務都市として様々な先駆的取組みが行われています。林院長は、医療分野におけるご自身の国際的な活動経験を踏まえ、国内外への診療技術の普及のため、国家戦略特区による規制緩和も検討されています。千葉市にとっても新たな挑戦ですが、クリニックとともに規制緩和を見据えた意見交換を積極的に行っていく方針です。
神谷市長の訪問 トップとの共有で前へ
神谷市長自らも訪問されました。
私からも市長に直接、情報提供したほか、質問でも触れましたが、現場を見て、考えやビジョンを共有し、進めることが重要なため、市長自らの訪問は有意義であったと考えます。
必要としている妊婦さんへ情報を届けるために
千葉市では、毎年約7000人の赤ちゃんが誕生しています。
そこで保健福祉局の担当課と意見交換を実施し、胎児を取り巻く医療環境の進化やNPO法人における妊婦さんや障害をお持ちのご家族への相談・支援体制についてご説明頂きました。
妊娠期の不安を軽減したいという共通の想いから、行政では手の行き届かない部分の支援について、母子手帳配布時やその後の妊娠時の面談等にて、必要な市民への情報提供やNPOの相談窓口のご紹介をするように連携が図られることになりました。
また、行政保健師等の研修に林先生を講師にお呼びしたとのことで、医療の見解によって更に知識を深め、日々の業務に活かされることが期待されます。
産む場所の選択肢を増やす
胎児の状態を深く検査することにより、出産は、自宅や助産院での出産が選択しやすい環境にも繋がります。
助産師会さんからも、理解を得られているとのことで、このようなネットワークが、より不安の少ない妊娠・出産環境となり、少子化を食い止める一助になると考えます。
私達が目指す、産み、育てやすい社会とは
医療は、厚労省の下で、千葉県による地域医療構想・計画により決定されているため、政令市も含む基礎自治体では、ほとんど権限を持ちえません。
また、この計画も医療圏ごとの大規模病院の役割や高齢化に伴う需要が大きく占めており、民間病院の役割と連携については、行政や議会においても議論されることはほとんどありません。
しかしながら、現実には、出産できる医療機関・小児科も減少するなかで、子ども達を取り巻く医療環境をどう維持していくかを考える必要があります。
私達は改めて、「生まれる前の環境を整えることから、子育て支援は始まっていること」、「安心して出産・育児をする環境を充実しなければならないこと」を感じ、行政支援の充実はもとより、民間や地域団体によるきめ細やかな支援と連携が必要と考えました。
生まれる前から、人間として、医療をうけられること、命と丁寧に向き合う妊娠期間の重要性を教わり、どう妊娠・出産を支えていくか、議会でも議論していきたいと思います。
吉田雄人
Vol1.の記事へのコメントで胎児ドックの行政目線での可能性について触れましたが、行政が具体的な支援に乗り出すためには、いくつかの課題をクリアする必要がありますので、箇条書きで列挙してみました。
・保険診療対象外であるという点(→他にも数多ある自費診療との差別化などもポイントです)
・中絶につながる倫理的な課題(→なかなか答えがあるわけではありませんが、行政としては踏み出しにくくするポイントです)
・診療機関の立地場所の課題(→自治体内に立地していない場合、そのサービスに補助を出しづらいということがあります)
・医師会との関係(地域の実情にもよりけりですが、医師会との事前の入念な打ち合わせを必要とすることが多々あります)